リトバスの世界観について

どういう考察を書くか悩んだ末、少し作品レベルを超えた領域に踏み込むことにしました。*1
夢世界とは何か、という問いに答えるのがこの考察の目的なんですが、その前に一つの謎を考えてみたいと思います。
夢世界全体で最大の謎は、棗恭介の存在です。八人の同意によって形成される夢世界において、恭介には大きな権限を付与されているように見えます。
しかし一方で、リフレインで小毬の存在を認識していなかったり、美魚シナリオや来ヶ谷シナリオで影響下にあることを示唆する発言をしたりと、その能力には限界があるようです。*2
この権限はどこから来るのでしょうか。一つの考え方は、八人合意の上での権限譲渡です。譲渡した権限を都合良く規定すれば、整合性は取れるでしょう。ですが、この考えでは、夢世界の根本部分に理樹が入る余地がありません。
これの何が問題かと言えば、夢世界が『kanon』よろしくゼロサムゲーム化する事です。あまり否定する証拠は無いのですが、葉留佳シナリオでクドリャフカが焼却炉にダンボールを捨てるシーンは、理樹の存在がある種の鍵になってることを示唆しているとは思います。あと、クドリャフカシナリオで美魚がかなり後半で登場しますが、美鳥との入れ替わりは6月4日でほぼ間違えないので、これも証拠でしょう。*3
理樹こそが夢世界の根本的な核である。という結論が一番適当だろうと思います。つまり、理樹との親密度に比例して夢世界内における影響力が増加していく仕組みだと考えてください。
八人はスタート地点で、親密度に応じた夢世界への影響力を持つわけですが、その中で恭介が最大の影響力を持つのは、当然の結果でしょう。
であるならば、恭介の望みに沿って悲劇はいくらでも起こせると考えられそうですが、日常エンドの存在から、当初の力関係は均衡状態であることが分かります。
この均衡はどの願いを叶えるか競い合うのでは無く、一人の悲劇につながる願いを、他者が幸せを願う気持ちで抑制する形で生じるもの。*4
各ヒロインとの行動によって、影響力は変化するわけですここでは夢世界全体に対する影響力の総量は一定だと考えたほうが、鈴より先に五人を攻略する必要性を説明しやすいかとは思います。*5
恭介は倫理も何も関係無い立場なので、理樹の成長のためにヒロインの願いを無条件で支援すると考えれば、どのシナリオでも恭介とヒロインの力関係は問題になりません。*6
それで、理樹が夢世界の中心である理由ですが、作中から汲み取れば、ナルコレプシー克服時に語られる理樹の言葉から、過去のショックによって集団的無意識とリンクした理樹の特異性が、八人の意識を共鳴させる湖面の役割をしたのだ。
みたいな胡散臭い説明しか出来ないわけですよ。だから作品レベルを超えます。つまり、これだろって事です。
これ以上の説明は無いと気もしますが補足すると、鈴と二人での学校空間の再構築するシーンは、音から光玉が鈴なわけで必然的に理樹は湖面であると言えるし、肉親の死→現実の否定→幼馴染よる救済→過去の想いの忘却、という流れが折原浩平のそれとよく似てると思います。
それで最初の問いへの答えですが、理樹の永遠の世界をベースして臨死の八人の意識によって作り出された永遠の世界の亜種、というのが自分の解答です。
過分に妄想気味ですが、これで自分のリトルバスターズの考察を終わりにします。多少でも読んだ方の益になった幸いかな。

*1:最後だから大目に見てください。資格も能力も無いのは承知してます。

*2:前者はともかく、後者が虚言である可能性はありますが、美魚シナリオは理樹の成長を促そうとしたなら詰めが甘いし、来ヶ谷シナリオは夢世界そのものが壊れかけてるので、嘘をつく必要があるのかは疑問です。

*3:繰り返しを前提とする夢世界において、ヒロインが理樹の認識しないところで悲劇に見舞われる構造は、今回の作風に会わないで採用したくないと思ったのが先だと告白しておきます。

*4:どっちでも大した問題ではないけど、前者だと絶対に誰かの願いが叶うことになりそう。真に安定してないから。

*5:この一文は卑怯ですね。けど、自分の筆力ではこれが限界。

*6:影響力の総量が、恭介+ヒロイン>その他全員 が願いの叶う条件。