『くま クマ 熊 ベアー』を読んで思ったこととか。

くま クマ 熊 ベアー (PASH! ブックス)

くま クマ 熊 ベアー (PASH! ブックス)

先に断わっておくと、特に感想とかではなくポエムです。

かつてエロゲに費やしていたリソースの半分くらいを「小説家になろう」に傾けて久しいのだが、いまいち感想などは書けないでいる。理由は色々とあるのだけど、大きななものの一つに『異世界迷宮で奴隷ハーレムを 』についての評価が定まらないというものがある。
疑うべくもなく『異世界迷宮で奴隷ハーレムを 』は怪物じみた作品である。しかし、怪物を怪物だと言ったところで、何も言ったことにはならない。求められるのは、その異形を正しく描写するための方法論であって、私は未だそれを持たないし、これから先で手に入れることが出来るかも大変に怪しいところだと思う。*1必然、その異形を色濃く引き継ぐ物語たちに対しても口を噤まざるえないわけなのだが、『くま クマ 熊 ベアー』には閉ざされた口を開きたくなるような軽やかさがあった。*2
かわいいは正義」という言葉がある。検索エンジンに頼ると「鉄兜は重い」が「重いは鉄兜」ではないという旨の注釈が出てくるが、これは一見正しいようでいて、「かわいい─正義」の持つ極限的な可能性をあまりにも無造作に切り捨ててしまっていると思う。
「正義は可愛い」が成立しないと言い切れるのは、「正義」が「可愛い」と無関係に定礎されている世界でのことに過ぎない。それはただ単に無数にある世界のバリエーションの一つでしかないはずだ。
私たちはトラックに跳ね飛ばされながら*3、善/悪を分かつ要石の姿形がクマの形をしていることを夢に見ている。それは間違いなく甘美な夢だ。気がかりは一つだけ。「美醜逆転」の四文字ではあるが。

*1:アタリのみで許されるなら、「エイリアン&カウボーイ」ぐらいは言えるが

*2:異世界迷宮で奴隷ハーレムを 』もある意味では軽やかではある。羽毛と反重力くらいには性質に違いがあるとは思うが。

*3:跳ね飛ばされないけどね