妖怪と小説家
- 作者: 野梨原花南,けーしん
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/富士見書房
- 発売日: 2015/12/11
- メディア: 文庫
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『イバラ学園王子カタログ』における最後の総括の艶消し振りを読んだときは、編集の求めに応じて敢えて台詞で語らせたのだろうと勝手に思っていたのだけど、今作の菊池寛や宮沢賢治の台詞における直接性を見るに、より分かりやすく多くの人に伝わるような形を作者としては追及しているということなのだろう。
ただ個人的な意見を言えば、野梨原華南の最良の部分というのは
「本当ですとも。さあ、お化粧をして、綺麗な服を着て、おいしいものをたべて、音楽を聴いて踊って、陰口をたたかれてしまうぐらい楽しく生きてしまいましょう」
『妖怪と小説家』 伍より
という一連の部分に代表される極めて善性の高いメッセージを物語の中に溶かし込むことの出来る希少な才能なのだ。紅茶に限度を超えて砂糖を入れたときのように、あまりに直截な表現は溶けきらぬ口当たりの悪い部分を残してしまうような気がしてならない。もちろん、上述の全てが作品に選ばれなかった人間の恨み言に過ぎないわけだけれど。