『星の王子くん』について少々

星の王子くん

星の王子くん

また一ヶ月以上が空きましたが、新手のスタンド使いのせいにしておいて下さい。
巷間での賛否否否両論*1を聞きつけ、なんとなくプレイしたのですが、感想としては賛に一票という感じではありました。超展開と呼ばれる理由も分からなくもないですが、物語として必要最低限の前フリは存在しているので*2、そこまで致命的な欠点とは言えないでしょう。*3
ですが、逆に評価する側に回ると、良いところを言語化するのが難しい作品であって、現在の評価もむべなるかな、という気はしました。
例えば、

「……せやったら我々は、一体何を信じればいいんでしょう。愛を恋を信じられないとするなら、いったい、なにを」
「『想い』、だよ」
(略)
「ちょっと違う『なにか』があって、それは、とって、強い。うちのパピィとマミィの間にあるのは、それ」

という対話がりんごルートの中にあって、他のルートも比較的にそういう方向性で収束するような感触は受けます。*4
この『なにか』は

ああ、世界って、これのことだったんだ。
愛する人が、側にいる。
それが、世界の全て。
触れた。
その世界を、自分のものにするために。
きっと彼女にとっても、そう。
(略)
二人は長く長く、その実感を楽しんだ。
世界が自分のものであることを。
自分が世界であることを。
『Love for SALE!』

「おーじのいない時のボクは、半分だったよ!」
「半分?」
「うん!身体の半分が引きはがされたみたいだった!
だから……だから、ボク、おーじの元へ走ったんだ!」
『Half Love,Half Life

ぐんぐんと強まる地球の引力に、僕は抗うことを諦めた。ちの居ない地球になんか、戻りたくもなかった。
いや、もう、どうでもよかった。
ちのの居ない、世界になんか。
熱の息苦しさとGと疲れに、僕は身をゆだねた。
世界が、閉じた。
A.I.Love You』

というような各ルートのエンディング付近での文章もあって、全体を貫通する縦糸であることは間違いないでしょう。しかし、ゲームをプレイした身からすると、これだけでは十全に作品を言い表した感じがしないのも事実なのです。
何故なら、この作品は「世界」とも称される主人公とヒロインの関係性を謳いあげるように展開しますが、その過程において実際に描写されるのは、主人公とヒロインの物語というより、むしろ主人公とヒロインを取り巻く人々との物語なのです。*5
ここで難しいのは主人公─ヒロインの関係と、主人公たち─人々の関係は、あたかも双子星のように相互に影響を与え合いながら存在しているということでしょう。確かに、『星の王子くん』が純愛系のエロゲーである限りにおいて、メインは主人公とヒロインの間にある『なにか』であると言うのが妥当です。しかし、もう一つの恒星が、もう一つの『なにか』が、この作品の中には存在してもいるのです。
おそらく、この二つの『なにか』を十分に言語化するためには、両者を並存せしめる、より根源的なものについて筆を取るしかないでしょう。ですが、星の妙なる輝きを語るのに、万有引力を引き合いに出すことは、一歩間違えれば野暮の誹りを免れません。
かくいう私も、それを回避しようと下手な比喩に手を出して、現在進行形でどつぼに嵌っているわけです。グダグダの極みですね。プレイしろよ、2000円台だぜ。といったところでしょうか。
個人的には、ユーリ親子とコテコ亭で食事をするシーンが好きです。佳作。


次もおそらくグダグダになる予定。

*1:amazon調べ

*2:あまりに最低限なのが問題であるわけだけど

*3:最初にりんごルートに入ったので、ちのちゃんの変身のふり幅にビビったりはしましたが。

*4:この読みだと、こころさんがわりと浮くけど。

*5:Leafではあるわけだけど、サブキャラの立ち絵の多いことよ。