続・『つきは東に日は西に』雑考

我ながらどうしようもないと思った記事にブクマがついて、何か妙に焦る現象に誰か名前をつけて欲しいと思う今日この頃。友人からも容赦のない非難を受けたので、頑張って中身のあることをひねり出してみようかと思います。
昨日の記事と正反対のことを書くようですが、この作品の特徴の一つはメインヒロインである天ヶ崎美琴の無記号性です。オーガストのゲームといえば「姫」ゲーという印象が今では強いですが、この時点では路線が定まっていなかったのだ。と結論付けるのは早計であって、キャラクターの設定と役割だけ考えれば、たぶん美琴は「姫」キャラです。
箇条書きマジックみたいなところはありますが、美琴は主人公とは隔絶した世界からやってきた貴種*1であり、同時にまだモラトリアムの途中にいるような人間だと言えます。これが「姫」キャラの絶対条件だと主張するつもりもありませんが、前作『プリンセス・ホリデー』のメインヒロインのお姫様はそのようなキャラクターだったと思います。
それでは何故、美琴が「姫」ではないのかと言えば、「姫」と学園生活の食い合わせの悪さを意識したからではないでしょうか。「姫」というのは一つの別世界を背負い込んだ存在であって、いわゆる学園ものの「日常」と反発しあうところがあるからです。*2ここら辺が未だに「姫ゲーム」大全が出ていない理由なのかもしれません。
ならば、この作品は美琴に「姫」の代わりに何を付与したのか。それは「無」でした。昨日の記事とつなげるなら、「記号」に対する意識が強いからこそ、「無垢」なヒロインという選択をしたということなのでしょう。理屈は分かりますが、人気投票は素直ですね。
ある種の対をなすヒロインであるほなみのEDが結婚で、美琴のEDが卒業なこととか、未来にいる主人公の分身との統合が美琴では選ばれないこととか、メインヒロインとしてモラトリアムを象徴したキャラクターではあるので、もう少し恵まれてもよかったのでは少し思いました。
まじで萌えゲーの感想を記述するのむずい。たぶんだけど、記号の操作うんぬんより、全体としてヒロインが明確に3グループに分けられるように配置されてることとかの方が重要な気がする。

*1:非感染者

*2:女装主人公という発明!(擬史)