『花と乙女に祝福を』について少々

乙女に祝福を ロイヤルブーケ 本編同梱版

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もう三月ですね。時が経つのは早いです。何もかも変わらずにはいられないってことなんでしょうか。三月も四回くらいは更新したいところではあります。では
『花と乙女に祝福を』は、主人公が女装して女子校に忍び込んで、学園の生徒たちと色々と騒動を巻き起こすという、どこかで見たことがあるような類型の物語です。私としては最初の頃の1クリック1クリックが幸せ過ぎて*1、エロゲって素晴らしいなと思ったりもしたのですが、個別シナリオなどを考えると佳作といった印象ではあります。ですが、ヒロインの一人である宝生聖佳のシナリオについては思うことがあったので、少し書いておきます。
聖佳は、日本を代表する財閥の子息で学園の生徒会長。眉目秀麗、文武両道であり、他人にも自分と同じレベルと求めるあまり、周りから敬して遠ざけられているキャラクターです。
聖佳のルートにおいて主人公の彰は、その状況を苦々しく思い、学園の生徒たちと彼女の仲を取り持とうとして奮闘を重ねていきます。その結果、聖佳と他の生徒たちとの距離は一時的に縮まるのですが、とある事件をきっかけに両者の関係はまた断裂してしまいます。
そのとき、絶望しそうになった聖佳を彰が支えることによって、恋愛という名の依存関係が始まるのですが、この依存関係を称して彰が「ボクが聖佳さまを普通の女の子にしてしまった。」と独白するわけです。
この独白が面白いのは、彰は基本的に聖佳に対して、他人との接し方を改めるようにアドバイスするだけで、彼女の内面にそこまで踏み込んでいるわけではない。彼が尽力したのは、聖佳と生徒たちとの間を取り持つこのに過ぎません。にも関わらず、この言葉には説得力があります。
それを裏打ちするように、彰は絶望の淵にいる聖佳に対しては、何の働きかけもせず*2、ひたすらに周囲の生徒への説得に力を注ぐことによって、全ての問題を解決してしまいます。
ここにあるのは、周囲の環境を変動させることによって、中にいる人間の在り方を改変できるという思想です。『全死大戦』風に言うなら、メタテキストの書き換えが聖佳シナリオでは行われている。これは他のヒロインのルートには見られない特徴なので、面白いなと思いました。
別にそれ以上の感想もないのですが、『花と乙女に祝福を』はここ数年見られるコミュニティを物語の中心にすえたエロゲ*3を意識したところがある作品なので、『全死大戦』のような個人の在り方をメインにした物語と同じ思想が出てくるというのは、興味深いと思ったので書いてみた次第です。お粗末

*1:戯言だけど、エロゲのシナリオ単位はKBじゃなくてクリックで計測すべきだと思う。

*2:具体的に言うと、セックスしない。

*3:『てとてトライオン』とか