『俺たちに翼はない』雑考

PCゲーム『俺たちに翼はない』オリジナルサウンドトラック

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クリアしました。評判に違わぬ愉快な作品であったと思います。あまりに基礎が強固なので、その上に出来上がったものに一抹の寂しさを覚えたりもしますが、それは強欲というものでしょう。中々の作品でした。お勧めです。
ここから個人的な偏った読みに入るので、悪しからず。
この作品は、わりとヒロインによる主人公の逆攻略という側面があって、それによって主人公たちの存在意義が固まっていきます。*1そう見た場合に、ガルーダっていのは過去において小鳩に攻略されたキャラクター*2であって、にも関わらず小鳩本人に存在を否定されるという悲劇の主人公なんですよね。
何が言いたいかといえば、統合ルートの本質というのはガルーダの救済じゃないかってことなんですよ。この読みは統合ルートの全体を説明するのは苦しくて、数ある主題の一つに過ぎないでしょう。それでも個人的にそう読みたいわけです。
ガルーダというのは、俺つばの作品レベルの中では救うことが出来ないキャラクターとして位置づけられている節があって、それはその言動であったり、瞬間的な出現などに示されいる。彼は本質的に狂気と共に定義されていて、どう足掻いても幸せな結末を迎えられない存在でしかない。
それにも関わらず、やはりガルーダは救われなければならないわけです。だって『俺たちに翼はない』という作品で語られるのはメルヘンだから、最も業を背負い込まされたガルーダを救わずに終わる御伽噺なんて、許されるはずがないじゃないですか。
だから二つ目のムービーというのは、境目を表現しているんだと思うんだよね。蓋然性の違いと言ってもいいのかな。前の3つのルートが起こったかもしれない物語だとしたら、統合ルートというのは本来なら起こりえない物語というわけです。そして、それはデウスエクスマキ無しには救われないガルーダの悲劇性の証明でもある。*3
ぶっちゃけると、チェス盤をひっくり返してみたら、真ヒロインはガルーダじゃん。というレベルの戯言なんですが、なんか珍しくキャラクターに感情を入れたので長々と書いてみました。

*1:コミュニティにほだされるという面もあって、そこで間接的に主人公たちが影響を与え合ってもいる。

*2:鳳翔は小鳩による攻略過程に闖入したに過ぎないと思う。

*3:そこまでやって五分の一というのだから、メルヘンも残酷ですね。