三枝葉留佳

このシナリオの考え方は二種類あります。一つは、二木佳奈多を「双子の絆」的な概念で夢世界の例外的な存在だと捉える方法。もう一つは、夢世界の中の事象と捉えて、葉留佳の駒であるとする方法です。あまり支持されない気もしますが、後者だとして考察を進めていきます。
葉留佳は、この作品において異色のヒロインです。それは彼女が夢世界のスタートにおいて、不幸であることに起因すると言って問題無いでしょう。いかなる理由で、願いの叶う場である夢世界で、不幸から始まる物語が存在しえるのか。
そして、八人以外の存在である二木佳奈多が、世界の仕組みを理解したような発言をするのは何故なのか。これらの疑問が、全てをクリアした後だからこそ立ち上がってくるのです。
一つ目の疑問に対する答えは、他の七人に葉留佳の不幸を願う理由が見つからない以上、葉留佳本人が望んだとするしかないと思います。
そして、二つ目の疑問の答えは、美魚シナリオにおける美鳥と同種の存在が、葉留佳シナリオにおける佳奈多なのだと考えています。根拠は、異父重複受精児同士では、現実的に入れ替わりが不可能なこと。あと、リフレインエンドに佳奈多の立ち絵が出てこないのも重要ですね。
この二つの解答から、葉留佳シナリオを見ると、佳奈多は一人でかなり結論に達してるんですよ。少なくとも、佳奈多と立場を入れ替えたいと望まない地点まで、現実世界の修学旅行前に来てると考えられるわけです。
最後のDNA確認イベントまで葉留佳は理樹無しで辿りついた、そして真実を知ったのだと考えるのが、一つの手だとは思います。明確な理由は無いですが、佳奈多の慟哭が葉留佳が夢世界で紡がせた虚言に過ぎないという結論は、個人的には承服できませんから。
葉留佳の願いは、真実を受け入れられるほど強くなること。妄想ぎみなのは分かっているんですが、葉留佳と佳奈多の二人で、人間の感情と理性の相克みたいなテーマを表現したシナリオなんだと考えています。
あと、このシナリオには夢世界に対する重要な情報は無いと思います。まあ、二木佳奈多の存在が一つの重要な情報だとは言えるのかもしれません。