西園美魚

これから先はネタバレします。
さて、個別考察に先んじて私の中で前提としていることを羅列しておきます。
1、夢世界は八人で形成されている。
2、八人と理樹と鈴以外の存在は、彼らによって作られたものだ。
3、修学旅行当日まで日付が進めば、必ずループが発生する。
4、全ライター共有の世界設定が存在するはずだ。
まず一番最初に美魚から始めるのは、私がメガネ属性だからではなくて、彼女のシナリオが他のシナリオを考える上でも役に立ちそうだからです。
ミステリー関係に絡ませた言動。つまり、『匣の中の失楽』を思わせる作品から示唆される虚実が混ざった世界観の提示と、「人が小説を読むのは、人生が一度しか無いことへの抗議である」という北村薫からの引用ですね。*1
前者は、そのまんま夢世界のことを主人公に匂わせてると考えるのが妥当です。これは後述しますが、全登場人物中で彼女だけが、夢世界の存在を確信できる人間であることを根拠にします。
後者は来ヶ谷の発言と合わせて、総体としての夢世界の目的を提示していると考えられます。つまり、「夢世界とは願いを叶える空間である」ということです。これは前者以上に重要な考えで、私の考察では夢世界を捉える指標みたいなものです。
虚実の入り混じった世界観というのは実に厄介な存在です。野球後のホットケーキパーティーまでは現実に存在したとしましょう。では、個別ルート後の出来事は全て夢世界の中だけで起こったことなのでしょうか。そう出来れば簡単ですが、転落したバスにはリトルバスターズのメンバーが全員乗っていたことを考えれば、個別に判断するしかないでしょう。
ここで、八人の願いを叶える場として夢世界があるという指標が活躍するのですが、西園美魚の場合は深く考える必要はありません。
夢世界を認識できる理由とも重なるのですが、現実世界において影が存在しない人間なんていませんから。二人で本屋に行くシーンまで現実で、影が無い展開からが夢世界のみの展開でも特に問題無いのではないでしょうか。*2彼女の望みは美鳥との入れ替わりですから、望みを叶える場としても機能してますし。夢世界を一番満喫してるのは、案外この人なのかもしれませんね。*3
一つ問題があるとすれば、美魚が現実世界で日傘を常備している理由なんですが、実際に肌が弱い、人から距離を置くための装置、自分の妄想(美鳥)を強化するためのキャラ作り、の三つかな。

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

*1:妄想の類だけど、『西園美魚後期クイーン問題言及の不作為について』で考察が書けそう。

*2:全員での短歌イベントまでは確実だとして、川辺で短歌を境界線とする区切りが綺麗な気はします

*3: 彼女が世界の秘密を全て知ってるとするなら、主人公は道化なんだよね。