リトルバスターズ!

リトルバスターズ! 通常版

リトルバスターズ! 通常版

これで昔は鍵っ子だったんですよ。主にピークが小6なのはご愛嬌だけど。
どんなアンチでも、麻枝准が業界に与えた影響は否定できないだろう。その氏の引退作である『リトルバスターズ!』は、実に彼らしい作品に仕上がっていると思う。
父性の欠如、精緻の反対をいく世界設定、ご都合主義な奇跡。そして、拭いきれない死の影。お馴染みの要素から最後に彼が紡いだのは、今までで最高のハッピーエンドだ。
この作品を最後までプレイした人は、その愚直なまでの人間賛歌に反感を覚えるかもしれない。あまねく出会いを祝福できるほど、善意で全てを語りえるほど、世界は美しくは無いのだから。
そして、それは麻枝准が今までの作品で示してきたことでもある。

偶然の出会いから、天使の人形が一つの奇跡を起こす時、そこには望まれなかった願いの影が透かし見える。
翼人の魂を宿す少女とその母の物語は、善意では抗いきれぬ運命の過酷さを示唆している。
気高いほどの愛が、そのまま一つの悲劇であることもあるのだ。

それでも前を向こう、遅々とでも現実を進んでいこう。そういうメッセージの作品なんだと思う。
まあ、悪くないよね。最後まで追ってきた甲斐はあった。そう思わせてくれる作品でした。

野暮だと知りつつ、少し世界設定を考察するつもりです。麻枝シナリオ以外から、世界の秘密に手を伸ばしてみる心積もり。