チャッピー

もはや半年に一度の生存報告になっている感もありますが、気にしない方向で。

チャッピー

チャッピー

サイコ―。の一言に尽きる。
もし日本版は無粋な検閲がかかっていて、見るに値しないと思っている人は、今すぐネットで削られたシーンを確認した後、映画に直行すべきだと思う。
削られたシーンは間違いなく重要だが、演出の意図は明白で、シーンそのものの存在を知っていれば疑いようもなく脳内で補完できる類のものでもある。完全なものが望ましいにしても、映画館でこの映像を見る機会を失うのはあまりにもったいない。
本作は極めてオプティミズムに満ちたSFである。「意識」の取り扱い一つとって、現代SFの薫陶を受けた者なら、その無邪気さに醒めた視線を送らざるえないだろう。だが同時に、この楽観主義こそがSFに起源ではなかったかとも思うのだ。
科学はもはや人間の幸福とは関係が無い次元で駆動しているというのも一つの事実ではあるだろう。しかし、闇雲な恐怖だけで自らの創り出したものと触れ合うのは、間違いなく愚かしいことであるはずだ。
監督であるニール・ブロムカンプは出世作である『第九地区』で「人間のどうしようもなさ」を描いた。比して『チャッピー』は「人間はどうしようもない。だから、どうした」という映画であると思う。
あるいは、これは一つの後退であるのかもしれない。けれど、私にとってスクリーンと向き合った二時間あまりが、疑うべくもない幸福な時間であったことは間違いがない。秀作。