フライト

見たら、なかなか良かったのでネタバレ全開で感想など。
内容を知らない人のためにストーリーを要約すると、主人公が操縦している旅客機に致命的な故障が発生し、あわや墜落かと思いきや、彼のとっさの機転で不時着に成功。主人公は多くの乗客の命を救った「英雄」になるのですが、実はこの人、アルコール依存症で奇跡の操縦時も酒と薬をキメており。というお話です。
CMなどを見てると、割と法廷劇風というか個人の良心と社会的な諸事情の間で登場人物たちが揺れ動くみたいな話に見えるのですが、実際には全く違って主題は主人公の「回心」です。
それが透けてみえた時点で、物語が何処に行き着くのかはある程度まで察せられてしまうのですが、そんな推測をねじ伏せてしまうようなデンゼル・ワシントン演じる主人公ウィトカーの人間のカスっぷりが最高でした。
別にこの人、良心が無いわけではないんですよ。だけど、ひたすら自分に甘い。
航空事故から生還した後、すっかり反省して二度と酒は飲まないみたいな素振りを見せるんですが、結局のところまた飲み始め、そこからはとんとん拍子で、多少行ったり来たりはするものの、基本的にずっと酒浸り。
乗り物の事故で刑事訴追されるかどうかの瀬戸際をずっと漂っているのに、車を運転している最中も何のためらいもなく酒を飲み続けた上、彼のアルコール依存を心配した新しい彼女に対して「俺は自分で酒を飲むことを選んだ*1」と啖呵を切って破局します。
そして最終的に、主人公の味方をしてくれていた全ての人の期待を裏切って、彼の運命を決める公聴会の前日に、ホテルの部屋にあったあらんかぎりの酒を痛飲し、二日酔いの状態でその日を迎えることになるわけです。
この時点でカスっぷりがかなりのレベルに達しているんですが、主人公はここで二日酔いを隠して公聴会に出席するため、当たり前のようにコカインを吸引して、色々な意味で更なる高みへと登ります。ハイになって颯爽とドアを開け自信満々に歩いていくウィトカーさん。その姿は、あの事故の日、飛行機に乗る前に酒と薬をキメていた彼と瓜二つなのでした。そう、彼のフライトはまだ始まったばかり──
個人的にはそんな感じの映画でした。彼が最終的にどうなるのかは映画を見てのお楽しみということで*2

*1:この台詞はあまりに典型的過ぎるとは思うが

*2:期待されても責任は負えないけど