スワンソング

ちょっと前にキッカケがあったので読んでみた次第。マキャンモンの方なんですが、それなり面白いわりには、あまり印象に残る作品でもなかったので、備忘録がてら『SWAN SONG』との比較など。
この物語は大きく二つに分かれていて、核戦争勃発とその直後の混乱を描いた第一部とその七年後を描いた第二部からなっています。当然のこととして、エロゲの方とイメージの連想がつながるのは第一部の方なんですが*1、同時に雰囲気はかなり異なります。
東西の冷戦に端を発した世界の崩壊というイメージが現代に生きる私たちにとって馴染み難いのはともかくとして、その崩壊を執拗な筆致で展開していくのは、好き嫌いがあるでしょうが、私には馴染まなかったです。*2
それに加えて、この作品には純然としたスーパーナチュラルな何かが存在します。この超自然的な何かは、登場人物たちの善と悪を一元的に分ける存在です。*3もちろん、善に組みする人間でも時にはあっさりと死んでしまうし、全編を通して善悪両方の登場人物の視点を行ったり来たりする群像劇なので、そこまで単純ではないのですが、割と分かりやすい世界観だとは言えるでしょう。
これを象徴するのが、スワンという通称の主人公の少女がもっているメシア的な側面で、彼女の善性は一度たりとも疑問に付されることはなく、導き手としてのスワンは全面的に肯定され続け、最終的には世界を救ってしまいます。文化の違いと言ってしまえば、それまでではあるのですが、核戦争で荒廃した世界でよくやるという感じはしました。
要は『スワンソング』と『SWAN SONG』*4の関係というのは、神に祝福された者たちと神に見放された者たちの対峙、あるいは神のいる世界と神のいない世界の対峙であって、ある種のネガとポジのようなものです。たぶん、後者の方はそういう意識もあって、このようなタイトルにしたのではないでしょうか。
第二部はけっこう面白いのですが、上下巻合わせて1000ページ超の大書なので、モダンホラー第三の男に興味があるか、『SWAN SONG』のひまわりに象徴される「再生」のイメージを読み比べてみたいと思う人は読めばいい気がする。

*1:教会とか発狂ぎりぎりのサラリーマンとか。

*2:渚にて』のような淡々とした終焉が自分の好みだったりする。

*3:特に悪の面では、邪悪さを一身に背負った怪物が出てくる。なんか途中から凄く情けなくなるけど。

*4:何とも捩れたタイトルの対比。