境界線上のホライゾン2・上

なんとか週末中に読み終わったので、とりあえず書こうかと思います。
単純な比較として、今までのシリーズ三巻の中では、これが一番良く出来ていると感じました。前二巻がキャラクターの顔見せや世界観説明によって物語のテンポを犠牲にせざるえなかった面を差し引いても、この巻に軍配が上がるんじゃないでしょうか。
新キャラの増員が凄まじいですが、そこは絵師と机を並べてる間柄の妙が大きくて、登場シーンで絵が付くので覚える負担はそれほどでもないです。*1むしろ主人公側の方が忘れてて厳しかったですね。
新たな敵の紹介を兼ねた戦闘、敗北を通しての問題の提起、解決の糸口としての過去の存在の暗示、そして再戦へ。という『終わりのクロニクル』から続く一種のメソッドの持つ安定感というか*2、風呂敷の広げ方が適量なのが読んでて分かるので、安心して来月の下巻を待てる作品に仕上がっていますね。1を読んで厳しいかなと思った人も、この巻を読んでから判断して欲しい出来。
ここから下は適当に思ったことを羅列。
1のときには当然過ぎたのか気がつかなかったのですが、世界観的には前に進んでいるのに歴史的には遡っているというのは*3いかにも川上稔らしくて笑うところなのかな。役割に翻弄されることに自覚的なキャラクターというのは、前から周辺的にはいたけど、ここまで明言されたのは立花・裎が初な気がする。この問題は宗茂に反転するものなので、彼女には死亡フラグが見えますね。
これから「解釈」の歴史の後ろ側に「真実」の歴史というものが語られたりするんでしょうか。異族の獣人系にマイノリティー性を被せるというのは、新伯林で確立した部分だけど*4、実際の歴史を参照しながら、文脈をぼかしていく行為には少し考えさせられる。*5あと教皇は今回も萌えキャラでした。

*1:ただ骨の人の口調が数百ページを超えてきた人間には煩わしかったので、さっさと退場して欲しい。

*2:都市シリーズのときから、基本形としては存在したけど

*3:終わクロの国家関係を回収しきれなかったという反省もあるんだろうけど

*4:巴里は普通にユダヤ人出てくる

*5:一種のイデオロギー性を嫌ったということではあるんだろうけど。