文学少女と飢え渇く幽霊

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)

文学少女シリーズの二巻目にあたる本作ですが、これはよかったですね。
先日の一巻目の評価は少し間違っていたと思います。このシリーズには良くも悪くも「大人」はいないということなのでしょう。*1今回もかなり観念的なものが物語の中心にあるとは思うのですが、全体的にファンタジーの度合いが強くなったのもあって、すんなり受け入れることが出来ました。
取り分け

わたしの中にある、あなたを愛しいと思う感情は、お母さんの呪いなんだわ。

からの展開にはちょっと涙腺が緩んでしまいましたね。
これは人の持つ意志の尊厳を高らかに歌った物語です。この作品で『嵐が丘』に託され反問されたは、そのラストにおけるヘアトンとキャサリンの結末でしょう。原作の彼らは愛し合うようになるのですから、かつてのキャサリンヒースクリフのように。
つり橋効果の例を挙げるまでもなく、人間は環境に左右されながら生きていくものです。ですが、それでも人間には意志があり、そこに自由が存在すると私は信じています。
語り部たる姫倉麻貴が言うように、この物語には意志の稲妻のような輝きがありました。一人の少女の儚くも美しいその輝きが、今も私の中で鮮やかな感動を呼び起こしてなりません。実に自分好みの美しい物語でした。
今更だけど、かなりお勧め。

*1:それでも一巻は自分には合わないけど。