とくまでやる

とくまでやる (徳間デュアル文庫)

とくまでやる (徳間デュアル文庫)

先の記事でああ書いたものの、近頃のは全部カバーしてないと思い、とりあえず一冊読んでみたら少し驚いた。
清涼院作品から、長所でもあり短所でもあるゴテゴテ感が取り除かれるなんて、想像もしなかったからだ。
2ページ一区切りというスタイルが速度を否応無く高め、情報の負荷も無く流れるように最後まで物語は紡がれていく。お馴染の過剰なミステリー的装飾を抑え、謎を謎として処理すると、大説はこんな風になるのかと、昔の読者として感心してしまう軽快さ。
一月を超える連続自殺事件、登場人物の珍名・奇名、犯人を一瞬で見抜く推理能力、壮大な陰謀組織 悪ふざけのような言葉遊び と言われればJDCシリーズを読んだことがある人は、似たようなものを想像するかもしれませんが、ここにあるのは全く別の何かです。
彩紋家事件』で投げ出した人とか読んでみるといいと思う。アクが抜けて奇妙な魅力は減ってはいるけど、その分だけ大説を大説たらしめるものがダイレクトに伝わってきて、私は読み終わった後、愉快な気持ちになりました。
残りのシリーズ二冊がこれから読むのが楽しみですね。お勧め。