デスノートについて思うこと

さて、指摘されているように夜神月には、第二部において敗北する物語上の必然性が乏しい。結局は大場つぐみの頭の中にしか真相は無いにしても、その理由を考えるのは、小ネタとしては悪く無いと思う。
逆算して考えるとすると、最終場面でニアが言う「自分たちはLには劣るが、メロとならLに並べ、超せる」という構図が第二部を一番言い表しているだろう。
つまり、物語の中心は第二部ではキラ越えではなくL越えになってしまう。
ニアとメロに求められるのは、キラを出し抜くというよりはLより如何に強烈なキャラクター性を形成するかであり、マフィアとか異形のオモチャ群にというギミックはその為に存在するわけだ。
ある意味ではジャンプ的なインフレ現象と言えなくもない。その構造を支えるのは、やはりキラ=Lという立場だろう。
まあ、西尾維新も書いてるが、Lは世界支配者にリーチが掛かってるので、当然と言えば当然だが、夜神月はLの地位を継いでしまう。
これによって夜神月はキラという新世界の神と並行して、Lの地位の簒奪者という役割を背負うわけだ。そう見ると、第二部は簒奪者が正当な後継者によって罰を与えられるという、昔から在る勧善懲悪ものの一種に見える。
別に当初から、それを予定していたとは言わないけど、大場つぐみの中で、この構図が無意識にでも出来上がってしまった時点で、この方向に物語が落とし込まれていったんじゃないかと愚考する。*1
というわけで、最低でも第二部が始まった時点で、夜神月の敗北は決まっていたんだろう、というのが結論。
セカイ系主人公の月君は、「変換」後のセカイにおいてLの地位の簒奪という本質的な関わりを持ったために、自らの持つ特権的立場を失い、惨めな敗北を味わう羽目になるのでした。と言えば前の記事と辻褄は合うかな。

*1:後継者と簒奪者のどちらかが決まった時点で、もう片方も自動的に定まると言えるかもしれない。