花の名前

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美しい音を奏でる張り詰められた琴の弦を思わせる、そんな緊張感のある作品だ。
物語は、主人公である蝶子とその想い人である小説家の京との関係を焦点として進んでいく。両親の死を乗り越え純真爛漫に京を慕う蝶子と、蝶子への想いを自覚しながら自らの過去に縛られ動けない京。だが、ここで描かれるのは愛が人を救うと言った定番の美辞麗句では無い。人の理性では抑えきれね情念の話なのだ。
花の様に美しく咲く蝶子の中に彼女の消えぬ闇を垣間見、遥かまで堕ちながら一条の光で戻ることを選んだ京を見る時、人を愛すことの果ての無い深淵が透かし見える。人を好き、想い、共に居たいと願う時、そこに追従せざるえない業。そんなことを考えさせられる漫画である。
近頃の流行とは外れますし、画力も高いとは言えませんが、補って余りあるだけの魅力を持った作品かとは思います。ちょっと近頃の少女漫画はコメディー分が強すぎて、みたいな感想を抱いてる方に特にお勧め。