野梨原花南

作品中に思いがけず結晶する「人の「善さ」」とでも言うべきものが、野梨原花南の作品の魅力だと思うんだけど。一つの作品を取って、その行動が、そのキャラが、その展開が、という風に説明できるものではないので、人に野梨原花南を薦めるのは難しいと思う。
ただ、私は野梨原花南の作品を読んだ後「少し人間を信じてみようか」と感じたことが何回かある。それは私が他のどんな文豪の書いた作品にも感じることが無いもので。その感じを言葉にしたくて、もう五年近くのたうち回ってる。私にとってその程度の行為をする価値があるものを、彼女の作品から受け取ったのだとしか今だ文章にできない。
私の半分は、彼女が言葉にならぬ普遍的なものを物語に込められる天才だと思っているし。もう半分は、起承転結するままならぬ三流小説家だと考えている。まあ、どっちかは二十年もすれば分かることですね。今から楽しみだなぁ。