ハローサマー、グッドバイ

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

読みました。傑作でした。言葉にすれば全て嘘になりそうなので、皆さん読んでください。
上記の文で感想を終わらせようかと思ったのですが、それもあんまりなので少し書きます。この小説は、上質な青春の恋の物語と確固としたSF的な世界が一つのハーモニーを奏でている稀有な作品です。
夏のバカンスで海辺の町に来た少年と町に住む美しい少女の恋。これが物語の大筋なんですが、とにかくヒロインであるブラウンアイズが魅力的でね。少女から女に変わろうとする美しい女の子を恋人として間近で見るとか、男の夢を結晶化してたようなシチュエーションですよ。主人公の無駄に尖がった様子も、まさに青い春って感じで微笑ましいです。
SFとしても、迫り来る戦争の影、明らかになる陰謀、そして最後の最後にある大どんでん返し。という構成もさることながら、異星の海を主人公である少年の目で鮮やかに書いた作者のイマジネーションに脱帽と言ったところですね。固められた世界観があってこそ、後半の重々しい展開が可能になるわけですから。
最後のSF的なギミックには「妄想オチ」みたいな意見もあるみたいですが、私はハッピーエンド派です。けど、少年より少女の方が先に行ってしまうというのは、一種の比喩だとも思うんですよ。男は夢見ながら、女の後を追っていくわけですよ。その先に幸福な結末が待ってるを信じてね。
これはどこまでも、ある夏の輝かしい恋の物語。だから、ラストどう取っても美しい物語なんだと思います。実にお勧め。