Landreaall(13)

Landreaall 13 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

Landreaall 13 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

素晴らしい漫画を読んだ。傑作である。物語好きでこの作品にまだ触れてない人間は、確実に損をしていると断言してもいい。それほどの放言を許すに足る感動が、読み終わった自分の中に残っている。
例えば、今回の主役の一人であるティティと呼ばれる少年の眼に宿った、曰く言いがたい光の意味を知ったとき、私はおがきちかという漫画家の技量の前に屈服した。それは何という快楽であったことだろう。
あるいは、一つの章の終わり、二人の少年の身分差をもって語られる涙の意味に、物語にひそむ深奥を感じて、私は驚嘆の念を心に深く刻み、この先の物語への期待感で胸は一杯になった。これはきっと至福という状態にとても近い。
なにより、物語をコミカルに紡いだかと思えばときに厳しく引き締め、それでいて破綻の気配すら見せない作者のストーリーテラーとしての才能に、私は羨望とある種の嫉妬を覚えた。なぜ私の頭はこんな豊穣な物語を紡ぎだしてくれないのだろうかと、そんな埒もないことが頭の隅を過ぎったのも、恥ずかしながら事実なのだ。
「積極的な価値感情を広い範囲の人々に永続的に、しかも稀に見るほど強く呼び起こすことの出来る人物」とは言い古された天才の定義だが、もしこの言葉が正しいとするなら、この巻を描いた作者には間違いなく天才が宿っていた。そう思わせてくれるだけのものが、この13巻に詰まっている。おがきちかの全キャリアの中でもこれは一つ頭抜けていますね。
もうね、読んでない人は読もうよ。日本で連載中の漫画の中で少なくとも十指に入る作品だよ。絶対に地球に生まれて良かったと思うから。必読、お勧め。