空の境界 矛盾螺旋

広大な電子の海の片隅で呟やきを交わす機会がありまして、興味が湧いたので滑り込みで見てきました。実はここまで全章スルーしてきた不信人ものなのですが、原作は読んでるので問題は無かったです。前後する時間軸に多少は翻弄されましたけどね。
見ようと思ったきっかけは、臙条巴荒耶宗蓮の相関性についての話題で、どう見ても臙条巴が割を食ってるという話だったんですが、それは本当にその通りで、台詞にはされてるんだけど、巴の存在の重みが演出に反映されてないという印象を受けました。
まあそれは、オリジナルの持つ密度を捨てて、映像としての軽やかさを取るという監督の判断なんだと思うので、式がぐるんぐるん回ってて楽しかったことですし、批判はしません。全章の調和を考えての判断を、全部見てない自分がどうこう言うのも変な話ですし。
それと、この作品はフィジカルなイメージが強いなという印象を受けました。*1個人的な意見ではあるんですが、奈須きのこの作品世界というのは、肉体的というよりは物質的な世界だと思ってたんですよ。よく言われるように、直死の魔眼というのは、物の死の中に生命の死が丸ごと内包されてるわけで、唯物的世界観の象徴とみることが出来る。あるいは青崎橙子の人形も、肉体の持つ特権性を真っ向から否定しています。
だから映像化するなら、もっと静謐な世界が展開されるのかなと想像していたので、こういう肉体が肉体としての重さを持っている感じというのは自分の中では新鮮でした。あと最後に幹也に鍵をねだる式が可愛かった。
今更な感は否めませんが、原作を読んでるなら映画館で見て損はないレベルかと。お勧め。

*1:時間軸が操作されることによって、キャラクターの動作が持つ時間性にフォーカスがあつまるのは、原作との関係もあるから、演出意図の核ではないのかもしれないけど。