イティハーサ

イティハーサ (1) (ハヤカワ文庫 JA (639))

イティハーサ (1) (ハヤカワ文庫 JA (639))

漫画ナツ100を選んでた時に、他のサイトの方を見て読んでみたいと思った作品なんですが、読んでみて良かった。素晴らしい作品でした。
はてなキーワードに詳細なあらすじが描いてあるので簡単に説明すれば、この漫画は古代日本を舞台に、善神である亞神と悪神である威神の戦いに巻き込まれた人々の物語を描いています。
傑作の傑作たる由縁として、多様な読みを可能にする底の広さが、この漫画にはそなわっているんですが、私には主人公の一人である鷹野の最後の叫びに、この漫画の大テーマを感じました。
鷹野は神々の戦いに巻き込まれながら、自らの出生に関わる秘密から死地を歩み、大切な人との死別を経験します。その数奇な運命の果てに、彼は自らの人生の大半を規定してきた存在と邂逅し、自らの運命の意味を啓示されます。
この啓示に対しての鷹野のセリフに、物語の重心の半分が掛かっていると私は思います。そして、その後に続く展開に巻き起こる感情こそが、この漫画の大テーマの一つだと断言してもいい。
絶望という言葉すら生ぬるい圧倒的なディスコミュニケーションの存在。
この漫画はそれを表現するために、何層にもわたる構造を敷いて、読み手が絶対にそれを感じるように作り上げられてる。だから非宗教人である私にも、その喩えようのない感覚が内面にクッキリと浮かび上がった。この漫画に水樹和佳子は10年を越える歳月を費やしているんだけど、それに値する名作ですよ。
キーワードから引用すれば

救いとは何か。神とは何か。そして人間とは何かを痛烈に問いかけた作品。

そういうことなんだと思う。お勧め。