ダブルブリッド?

ダブルブリッド〈10〉 (電撃文庫)

ダブルブリッド〈10〉 (電撃文庫)

一つの物語が終った。読めてよかった思う自分があり、読まなくてもよかったのではないかと思う自分がある。
多くの先達が指摘してきたように、物語が終わりを始点に全てを秩序化させてしまう以上、最終巻を読むというのはリスクを孕んだ行為であることは承知の上だったとは言え、十代で読み始めた物語を二十代で読み終えるというのは、中々に考えさせられる経験だった。
この物語は最終巻になって自己確立の物語になったと私は思う、物語の最後で、主人公である片倉勇樹は、彼女の父を思わせる程に傲慢だ。
この傲慢さは自らの運命に出会った存在だけに許される特権的な振る舞いであり、おそらく多くのライトノベル作品が意識的にも無意識的にも避けてきた、古い物語のそれだろう。
西尾維新風に言えば、全ての存在はジェイルオルタナティブであって、完全に受け入れられる悲劇など存在するはずがない。
そういう意味で、最終巻は多少ライトノベルから逸脱した物語であったような気がする。主人公側ではなく、むしろ「主」を中心とする三人の関係にライトノベル的な気配を感じさせるところに、うがって見れば物語に横たわった長い年月の原因があるのかもしれない。
なんか純粋に面白さみたいな観点では見れなかったのですが*1中村恵里加にもう一回ライトノベル書いてほしいなと思ったので、満足はしている。

*1:読み直して無いから伏線なんて忘却してるし、たぶん仕方の無いことだけど続けて読んだら性急な印象は残ると思う。