媚肉の香り

年末に黙々とエロゲを崩すお仕事。こういう作品はやっぱり前情報の有無がどうしても作品の評価を変えてしまう面が存在しますね。
まあ、やってれば彼女がそうであることは自明だとは思うんですが、それでも揺らぎを楽しめないというか、もう一捻りあるのではないか的な読みを自分で無効化してしまうと、想定されている楽しみ方を外しているなという感じはしました。
エルフの自力が発揮されてCGやシステムと言った基本スペックは総じて高い。だけど、これは「気付き」のゲームだと思うんですよ。何度かのEDを経て、この物語の焦点に気付いた瞬間の快楽が、この作品の大きな部分を支えている。だから、前情報を持ってやった私にはそれほどでもなかったというが正直なところですが、客観的に頭で逆算したのを想定すると、けっこう面白い作品なんじゃないでしょうか。*1
ゲーム本編をクリアした後のボーナスシナリオを読むと、二人のキャラクターが対として設計されていることが明らかになって、そこは上手いなと思ったりもしたのですが、そうであるなら容疑を彼女にかけた方が物語構成としては美しかったような気はします。*2
この物語の裏の主役である彼女のキャラクターというのは結構ユニークな部類で、私は嫌いではないんですが、つまり本人も無自覚の内に少し分裂しているだとよね。一連の自分語りというのは、万引きして「俺の右手が勝手にやったんだ。」というやつの一種だと私は考えてて、本人が思ってるほど確立した自我が存在するキャラクターではないんじゃないかな。
だから実はこの人のハッピーエンドというのはゲーム中に存在しなくて、どのEDでもたぶん最後まで満たされないまま死んでいくんですよ。捕まってなお、自分を見つめ直せていないのがいい証拠。純愛系だったら一つくらい救いを用意してそうなもんですが、さすがというか何というか容赦がありません。そういう意味では日頃やってるゲームとは一味違って、やっぱり面白かったのかな。
私はエロシーンは動かなくてもいいと思うのですが、エルフにしては基本的に穏当なやつしかないのも印象的でした。というわけで無心でやれるならお勧めの作品です。

*1:今からやる人で前情報無しというのは少数でしょうけど。

*2:これはちょっと無茶な要求か。